サッカー用語集:VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)

用語集

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)とは

VARとはVideo Assistant Referee(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の略称で、
フィールドとは別の場所で複数台のビデオ映像を用いて審判員のことで、
フィールドにいる主審や副審のサポートをするルールとなります。

最終判断はフィールド上の主審に委ねられるため、
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)あくまで主審や副審のサポートを行う審判員となっています。

よってVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は全ての事象に介入するのではなく、
『はっきりとした、明白な間違い』をなくすために介入するものとなります。

介入の条件についても明確に定められており、
①得点かどうか
②PKかどうかの
③退場かどうか
④警告退場の人間違い
+主審が確認できなかった重大な事象
のいずれかとなっています。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)介入の流れ

①事象発生(上記4つの事象のいずれか)
②VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)がビデオ映像を用いて複数のアングルから確認
※必要に応じて主審を無線で交信
※交信時は主審は片方の耳に指を当てながらもう一方の腕を伸ばすシグナルをする
③VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入
※VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)側で『はっきりとした、明白な間違い』があると判断した場合、主審にレビューすることを提案
④オンフィールドレビュー または VARオンリーレビュー
※いずれの場合も主審は1回目の四角のテレビモニターの形を示すTVシグナルをする
※主観的な判断が必要な場合は主審自らピッチ脇にあるモニターを確認して判断する(反則の強さやオフサイドのプレー関与など)
※客観的な事実に基づく場合はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)側の情報をのみで判断する(オフサイドラインや反則があった場所など)
⑤主審による最終判断を伝える
※2回目の四角のテレビモニターの形を示すTVシグナルをして、最終的な判断を下す

こちらの流れでもわかる通り、
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)はあくまで主審の判断のためサポートであり、必ず判定が変わるという訳ではなく、最終的な判断を下すものでもありません。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の歴史

目まぐるしく展開が変わり、広いフィールドを主審と線審の目で全ては把握して判断することは難しく、
かつてはアルゼンチン代表ディエゴ・マラドーナの1986年FIFAワールドカップメキシコ大会準々決勝のイングランド戦で決めて神の手ゴールや、
2002年FIFAワールドカップ日韓大会の韓国対イタリア戦、韓国対スペイン戦のオフサイドラインやゴールライン、ファールなどによるゴールの取り消しと、イタリア代表フランチェスコ・トッティへの2枚目のイエローカードによる退場、
2010年FIFAワールドカップ南アフリカ大会欧州予選のプレーオフ第2戦のアイルランドで手を使ってボールをコントロールした後ゴールを決めて本選出場が決定したフランス代表のティエリ・アンリのゴール、
など今でも語り継がれている判定は数多くあります。

技術の進歩によりスムーズに主審の判断に介入ができる環境ができたこともあって、
2012–13シーズンのオランダ国内の試合で介入による判断の時間がどの程度掛かるかの仮想的なテストを行い、『得点、レッドカード、PK』に限れば試合への影響は最小限に抑えられるという結果を出しました。

それを持っては2016年8月より北米3部のUSLプロフェッショナルリーグで試験運用が開始され、
同年9月にはイタリア代表対フランス代表の国際親善試合でも採用されました。
同年12月にはFIFAクラブワールドカップ2016で公式戦で初めて導入がされています。

2017-18シーズンからは、ブンデスリーガ(ドイツ)とセリエA(イタリア)で導入が始まり、
2018年FIFAワールドカップロシア大会では全試合・全会場での導入がされています。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)のメリットとデメリット

メリット

メリットは何と言っても誤審がなくなりやすくなることとなります。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の歴史でもご紹介しましたが、
今までレフェリーの判定で試合結果が変わってしまったと言われているケースは数多くあり、場合によっては当事者やファンにとっては一生心に残る事象もあります。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入により、
より正確に、かつ納得感が増すため誤審と言われるような事象は間違いなく減ることは大きなメリットになります。

また、サッカーはとてもメンタルに左右されるスポーツとなるため、
プレーしている選手が主審の判定に納得ができなければその後のプレーにも影響は出てしまうこともあるため、選手の納得感という意味でもメリットがあります。

デメリット

一方でVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入によるデメリットもいくつかあります。

まず介入する回数や時間が多ければ多い程試合時間が長引きます。
2022年FIFAワールドカップカタール大会で一つの話題になったはロスタイム(アディショナルタイム)が長過ぎるという問題は起きています。

2018年FIFAワールドカップロシア大会から7-8分というロスタイム(アディショナルタイム)もありましたが、
2022年FIFAワールドカップカタール大会では前後半合わせて20分以上という試合も見られました。

インプレー時間を正確に計測した結果なので正しいと言えば正しいですが、
選手のプレータイムは確実に伸びています。
ただでさえクラブチームや代表チームでの試合数の増加していることでケガが多くなっていると言われているのに、
さらにプレー時間が長くなると選手のケガがさらに多くなってしまう懸念があります。

もう一つのデメリットとしてはスーパーゴール・スーパープレーが取り消されてしまうという点です。
これは正しい判定の結果とも言えるので賛否両論ありますが、
先述のアルゼンチン代表ディエゴ・マラドーナの神の手ゴールは約40年経った今でもサッカーファンであれば誰もが知っているゴールですが、
もし当時VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)があればハンドの判定で取り消されていて誰の記憶にも残っていなかったかもしれません。

そう考えると少し寂しいという気持ちは否めません。
『ミスも含めてサッカーだ』という意見もあります。

また、これはデメリットではないですが大きな問題点としてVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入できる事象はいつまで遡ってよいのかのルールがないことです。

確かに事象後にインプレー中・特にゴール前の攻防が続いているとVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)と主審の交信のタイミングがないですし、
何秒とルールにした場合定めた1秒前に事象が起きて介入ができず試合結果が決まってしまうような『はっきりとした、明白な間違い』の判定が流されてしまうとそれはそれで疑問が残ってしまいます。

感覚的には10秒以上遡ると長いかなという印象ですが、
Jリーグでは2023年4月23日に開催されたJ1第9節名古屋グランパス対湘南ベルマーレ戦では後半30分事に名古屋グランパスがゴールを決めましたが、
その直後VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入し約40秒前の名古屋グランパスゴール前でのファールがPKと判定され、
名古屋グランパスのゴールは取り消され、さらに湘南ベルマーレがPKを決めたことで同点に追いついたというケースもございます。

以上のようにVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の歴史はまだまだ浅く課題や問題も抱えていますが、
関わる全ての人が納得するルールというのは不可能なので、
運用しながら今後細かなルール改定でサッカーというスポーツがより多くの人を楽しませる方向に向かっていくことを期待しましょう。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)に関連するルール

・オフサイド
・半自動オフサイドテクノロジー
・オフサイドディレイ
などがVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)に関連するルールとなっています。

用語集:オフサイド
用語集:半自動オフサイドテクノロジー
用語集:オフサイドディレイ
でそれぞれ解説していますので、合わせてご覧になって下さい。

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